近年注目されているプラセンタです。一方でプラセンタには一般的によく活用されている豚プラセンタをはじめさまざまな種類があるため、馬プラセンタとどのような違いがあるのか気になる方もいるでしょう。
本記事ではそもそもプラセンタとは何なのか詳しく解説するとともに、馬プラセンタと豚プラセンタの違いについても紹介します。さらにプラセンタに含まれている成分や期待できる効果、プラセンタを取り入れる際の注意点など、プラセンタについてあらゆる面からご紹介していきます。
INDEX
プラセンタとは胎盤を意味し、一般的には胎盤を加工して作られた美容成分のことを指します。胎盤は妊娠すると子宮内に作られる器官で、いくつもの太い血管が走っており、母体から受け取った栄養をへその緒を通して赤ちゃんに届ける役割があります。赤ちゃんの成長とともに胎盤も大きくなり、出産時に排出されます。
赤ちゃんに栄養を届ける器官というだけあって、胎盤は栄養の宝庫です。動物の多くは出産後の体力回復のために、本能的に自分の胎盤を食べることが知られています。古く中国では紫河車(しかしゃ)という、滋養強壮の漢方薬として利用されていました。紀元前のヨーロッパでは医学の父ヒポクラテスが治療に用いていたといわれるほか、クレオパトラやマリー・アントワネット、秦の始皇帝など名だたる歴史上の人物が、美容や不老不死の妙薬として取り入れていたという言い伝えもあります。
プラセンタの原料は出産時に排出された胎盤から作られます。胎盤と聞くと「体に取り入れて大丈夫?」と不安に感じる方もいるかもしれませんが、このようにプラセンタは、古くから美容や健康を保つ目的のために愛用されてきた歴史があるものなのです。現代は主に馬や豚などから胎盤を採取したものを粉末やエキス状に加工。サプリメントや化粧品に配合され、広く提供されています。
現在プラセンタには、ヒトをはじめ動物由来のプラセンタや海洋性、植物性プラセンタとさまざまな種類があります。動物由来のプラセンタには成長因子が含まれているのが特長で、細胞の活性化やアンチエイジングなどさまざまな美容効果が期待されています。その中でも安全性が高く、アミノ酸含有量が豊富な点から注目されているのが馬プラセンタです。
胎盤は赤ちゃん1人に対して一つ形成されます。馬は基本的に1回の妊娠で1頭しか出産しません。そのため胎盤は1回のお産で一つしか取れない貴重なものとなります。また馬は妊娠期間が人間より少し長く320~380日程度とされているため、出産は基本的に1年に1回程度。生涯を通しても1頭の馬から採取できる胎盤の数は限られます。馬プラセンタは有効成分の豊富さから多くの効能が期待されているうえ、希少性が高いことから高級プラセンタとして取り扱われている特別なプラセンタなのです。
プラセンタというと豚プラセンタもポピュラーです。豚は1年に2回程度妊娠・出産が可能で飼育数も多く多胎のため、多くの胎盤を安定的に採取しやすい特長があります。豚というと人獣共通で感染するE型肝炎ウィルスが不安な方もいるかもしれませんが、E型肝炎ウィルスが豚の肝臓から胎盤に移行することはありません。また細菌などは製造過程で適切に滅菌、除去されるため安全に使用することができます。
馬プラセンタと豚プラセンタの大きな違いはアミノ酸の含有量にあります。馬プラセンタは豚プラセンタの300倍のアミノ酸を含有しているほか、豚プラセンタが持たない6種類のアミノ酸も含んでいます。アミノ酸には細胞を元気にする働きや、コラーゲンの生成を助ける働きなどさまざまな効果が期待できます。また馬は体温が高いため体内で寄生虫が住みにくく、細菌が繁殖しにくい体質をしています。そのため豚と比べると病気の心配も少なく、良質な胎盤を採取できると考えられています。
馬や豚以外にも、さまざまな種類のプラセンタがあります。
ヒトプラセンタは、その名のとおりヒトから採取した胎盤を原料に作られるプラセンタです。日本で使用されているヒトプラセンタは、基本的に日本人の胎盤から製造されています。
ヒト由来の胎盤は、薬剤メーカーが契約している産婦人科から提供を受けたもののみが使用されます。ドナーの血液検査や細菌感染の有無などさまざまな検査を実施し、全ての項目をクリアしたドナーの胎盤だけが提供されますが、その後もさまざまな検査を実施し安全性が確認されてから利用されます。
医療機関では美容目的のほか、更年期障害の諸症状緩和や肝機能改善の治療薬の一つとして用いられています。なお、ヒトプラセンタは医療機関でしか扱うことはできません。
海洋性プラセンタとは魚卵を包んでいる卵巣膜など、魚卵の一部を使って抽出した成分のことです。胎盤を使用していないため厳密にはプラセンタとはいえませんが、海洋性プラセンタには肌の弾力に欠かせないエラスチンが含まれているほか、アミノ酸やヒアルロン酸、コラーゲンなど美容にうれしい成分が豊富です。そのためさまざまな化粧品やサプリメントなどに広く使用されています。
植物性プラセンタは植物の胎座から抽出された成分で作られます。胎座とは種を抱えている部分のことで、例えばメロンでいえば中心部分の種を除くわたの部分を指します。種を育てる場所であることから、植物における胎盤のような役割を持った部位といえます。海洋性プラセンタと同様に厳密にはプラセンタではありません。とはいえ植物プラセンタにはアミノ酸が多く含まれており、美容目的で化粧品やサプリメントに配合されています。
馬をはじめとした動物性プラセンタには、さまざまな効果が期待できる有効成分が含まれています。その中で代表的なものを紹介します。
アミノ酸はタンパク質を構成する大切な成分です。筋肉や内臓、皮膚、髪など重要な組織はアミノ酸によって構成されています。人の体に必要なアミノ酸は20種類あり、一つでも欠けるとこれらの組織を構成することはできません。そのうち必須アミノ酸と呼ばれる9種類は体内で作ることができないため、食品などから摂取する必要があります。プラセンタにはこの必須アミノ酸も豊富に含まれています。アミノ酸を摂取することで、筋肉の維持や傷ついた筋肉機能の回復、肝機能の向上、コラーゲンの生成、代謝を良くするといったことが期待できます。
ビタミンやミネラルは体の調子を整えたり、細胞の生まれ変わりを助けたりするのに欠かせない成分です。プラセンタには美容や健康維持に欠かせないビタミンCやビタミンB群、カルシウム、ナトリウム、リン、亜鉛、鉄などのミネラルが含まれています。ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせないため、アミノ酸と摂取するとより効果を高めることができます。プラセンタならいずれも一度に取り入れられるため、高い美容効果が期待できるでしょう。
活性ペプチドはアミノ酸が二つ以上つながった構造をしており、骨や筋肉を作ることや免疫システムのサポート、血圧の調整、脱毛防止など体内でさまざまな働きを担っています。活性ペプチドを取り入れることで、バランスのとれた骨格や筋肉、健康の維持、アンチエイジングなどの効果が期待できます。
核酸とは細胞の中にある核を構成しているもののことで、DNAとRNAの総称です。ビタミンB群の働きを助けるために必要な栄養素であり、細胞が生まれ変わるときに欠かせない物質です。例えば体内で分解されたアミノ酸は体のあらゆる部位に運ばれ、核酸の働きによって必要な形に組み立てられます。
核酸は加齢とともに体内での合成数が減少すると考えられており、核酸が減少すると必然的に老化が進むことになります。核酸を補うことで若々しさを保つ効果が期待できるほか、記憶・学習能力の向上、認知症予防にも有効性があるのではないかと期待されています。
成長因子には細胞分裂を促す働きがあり、結果として新陳代謝を良くすることに役立つと考えられています。プラセンタにはいくつかある成長因子の中でも「表皮細胞成長因子(EGF)」「線維芽細胞成長因子(FGF)」「インスリン様成長因子(IGF)」が含まれています。それぞれ以下のような効果が期待できます。
これらの働きにより、若々しくハリのある肌の維持に役立つと考えられています。
ムコ多糖類は細胞と細胞をつないでいる成分で、関節ではクッションの役割を果たしています。ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などが代表的なムコ多糖類で、潤いや健康的な皮膚を維持するのに欠かせません。ムコ多糖類を摂取することで肌の保水力を上げ、乾燥から守ることが期待できます。
プラセンタ一つで複数の有効成分を摂取できるため、各有効成分の効果以外にもさまざまな複合的効果が期待できます。プラセンタの美容効果をまとめると、以下のとおりです。
ムコ多糖類が含まれているプラセンタには、高い保湿効果が期待できます。またアミノ酸や成長因子の働きで、肌そのものの水分保持力を高めることもできるでしょう。細胞の修復力が高まり、線維芽細胞の活性化によりコラーゲンやエラスチンが産生されやすくなれば、肌のハリや弾力を保つことにつながります。
プラセンタから抽出したプラセンタエキスには、メラニン色素の生成を活性化するチロシナーゼという酵素の活性を阻害する働きが認められています。さらにターンオーバーがスムーズになることで、肌の中に蓄積していたメラニン色素の排出が促されやすくなります。つまりこれからのシミを予防するだけでなく、今あるシミにも効果が期待できるのです。
そのほか抗炎症作用によりニキビなどの炎症を抑える効果や、抗酸化作用によって過剰な活性酸素を除去し、若々しい肌を保つ働きも期待できます。
プラセンタを取り入れる際は以下の点に注意しておきましょう。
ヒト由来のプラセンタ注射を受けた場合、献血をすることはできません。これは輸血による狂牛病の感染リスクを限りなく減らすためです。プラセンタ注射による狂牛病の感染は報告されていません。しかし、現在の科学検査では輸血時に狂牛病のリスクがある血液か調べることができないため、こうした慎重な対応を取っているのです。プラセンタ注射を打つことは禁止されていませんが、プラセンタ注射を打つと献血ができなくなる点は押さえておきましょう。
プラセンタエキスが配合されているからといって、全ての製品が上質なものとはいえません。特に馬プラセンタは希少性から原料が高額になる傾向のため、配合量が極端に少ない場合もあります。サプリメントであれば純末量の記載、原産国の表示、安全性を担保する認証を受けたマークの表示(GMPやJHFAなど)があるかなどを確認することが大切です。
プラセンタにはさまざまな種類があります。その中でも馬プラセンタは安全性が高く、アミノ酸をはじめ美容に効果を発揮する有効成分が豊富です。サプリメントや化粧品でプラセンタを使用しているものは多くありますが、馬プラセンタとなると希少。さらに美容に磨きをかけたいと考えているなら、馬プラセンタは注目したい成分といえるでしょう。
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